■ウルトラマラソンの秘訣は? 

定義・・・ウルトラマラソンはフルマラソンを超える距離のランニングのことを言いますが、ウルトラマラソンらしくなるのは、やはりダブルフルマラソン = 約80Km以上でしょうか。

距離が長くなると、それに比例した以上に時間を要します。100Kmで10時間から14時間かかりますから、朝早くから夜までぶっ通しで走ることになります。

ウルトラマラソンを完走するには強靱な肉体と強い精神力が要求されます。ウルトラマラソンは肉体と精神の耐久試験のようなものです。国際マラソンに参加できるような選手でさえ簡単に走れるものではないのです。

分類
日中の1日タイプ 80〜120Km 早朝(未明)からスタートして、だいたい日中で終わる距離。
24時間超タイプ 130〜250Km 20時間を超える制限時間を要し、必ず夜間走が入ってきます。
ステージタイプ 150Km〜 いくつかに区切られていて、複数日にわたる大会。宿泊が入ります。

ウルトラマラソンのポイント3×3
1,ウルトラマラソンで必要な3大能力 1,持久力 生理的持久力が大切です。そして体の各パーツの丈夫なこと。
2,スピード スピードがないと余裕を持ったスピードの落とし方が出来ません。
3,筋力 長時間繰り返される衝撃に耐える丈夫な筋繊維が要求されます。
2,ウルトラマラソンの3大栄養素 1,糖質 もっとも大切なエネルギー源です。
2,ミネラル 汗で失われる塩分やカリウム等を補充しないと、とても走れるものではありません。
3,アミノ酸 血中のアミノ酸濃度が低下すると、筋肉破壊が進みやすいと言われています。体脂肪の燃焼にも欠かせません。
3,ウルトラマラソンの3つのこつ 1,上りは無理しない   下りは押さえる 上りは乳酸の増加を避けます。下りは筋肉破壊を避けます。
2,食べて飲む 食べられることが大切です。
3,濃い練習 日頃からの濃い練習が基盤となります。

以下はこの詳細です。ただし、素質はないが是非ウルトラを完走したい、という人を対象としております。

それでは3×3のポイントについて説明しましょう。


1-1,持久力(耐久性)

 調子よく脂肪を燃焼してエネルギーに替えることが出来る体はとても大切です。筋肉や肝臓中に蓄えられるグリコーゲンだけではウルトラは持ちません。でもここで言う持久力とは単にスタミナを言うだけではありません。この他に筋肉や関節、内臓が長時間の運動に耐える必要があります。体の各パーツが丈夫でなければなりません。どこか一つが故障しても致命的です。走れなくなるか、もしくは無理して走れば治りが遅くなります。

 足では、筋肉、膝関節やその周りの靱帯、アキレス腱とその周囲、足の皮などが丈夫であって欲しいものです。馬ならサラブレッドよりも農耕馬タイプの方がいいのです。

 運動する足だけではなく内蔵も大切です。心臓は疲れ知らずだからほっておいてもいいのですが、胃腸がやられやすいのです。これが弱い人はフルマラソンの距離でさえも食べ物を受け付けなくなります。ウルトラマラソンの大会では途中胃薬を手放せない人もいます。

 日頃の練習から健康には気をつけます。健康はいい練習をするためにも大切です。「健康のために走り始めた人も、走るために健康になりましょう。」走る前から貧血や体調不良ではいけません。

 痛みやすいところ

  膝関節周り

  ふくらはぎ、大腿4頭筋(太腿前部)

  足首関節周り、足の甲の靱帯、足底筋

練習方法・・ なんといっても、この練習はLSDに限ります。散歩やピクニックのつもりで遠出をしましょう。徐々に体全体が強くなってきます。遠出の途中こまめに食事をとって、食べることに慣れていくことも大切です。自分の足に合った靴や靴下もわかってきます。

1-2,スピード

 ウルトラマラソンはキロ6分〜キロ10分で走ります。遅いときにはキロ12分で・・・と、これはもう歩きですが。こんな遅いスピードなのに、スピードが要求されるのでしょうか?

 そうなんです。スピードが必要なんです。同じキロ7分で走っていても、フルマラソン3時間(キロ4.1分)の人と、フル4.2時間(キロ6分)の人とでは余裕が違います。当然フル4.2時間の人にとってキロ7分はほぼ目一杯です。きっと30Kmぐらいから大幅なペースダウンになってしまうでしょう。

 スピードと言っても短距離スプリンターのことではありません。10Km以上の長距離分野で速い方が良いと言うことです。ふつう100Kmマラソンで制限時間は13時間前後です。これを完走するには、フルマラソンで4.5時間は切れないとまず無理です。出来ればフルを3時間30分、10Kmで45分のタイムを出せればいいですね。これぐらいになると、ウルトラマラソンでキロ7分は「余裕、余裕!」ということになります。

練習方法・・ 普段は緩急をつけたラン(ファルトレク)やクロカンが良いと思います。たまに10Kmのタイムトライアルをしてみます。インターバルもいいですが、距離は長い目にとります。要するに最大酸素摂取量を増やすような練習です。この手の練習方法は陸上関係のあちこちに載っています。

1-3,筋力

 筋力と言ってもボディービルダーのように筋肉を増やす必要はありません。ウルトラマラソンの筋肉は量より質です。マラソンは一歩ごとの筋肉にかかる力は大したことはありません。しかし何しろ繰り返し回数が多いので、やがて筋肉はへたってきます。耐久試験を受けているようなものです。弱い筋繊維から切れていきます。30Kmぐらいから足の筋肉が張ってきて、やがて走っている時から筋肉痛が始まります。エイドに着いて一度腰を下ろすと立ち上がることさえ苦労するようになります。この段階では顕微鏡的には筋肉に傷がいっぱい入っています。一番痛みやすい筋肉は大腿4頭筋(太腿前部)です。これをよく鍛えておきましょう。

10時間以上走っていると全身の筋肉が疲労してきます。首筋や背中、腰が痛くなることがあります。腕だって前後にずっと振り続けるわけですから大変です。体全体の筋肉トレーニングをしておくことが望ましい。フィットネスクラブやプールにマシンが併設されているところも多いので利用を勧めます。

練習方法・・

1,アップヒルとダウンヒル・・・坂や山道を利用して走ります。下りで大腿4頭筋が鍛えられます。この練習は下りの衝撃で膝を故障しやすいので気をつけてください。下りのスピードはほどほどに。

2,もう一つおすすめはスクワットです。大腿4頭筋や臀部が鍛えられます。これも膝や腰を痛めやすいので正しいフォームでやってください。肩にウェイトをかける必要はありません。自分の体重だけで充分です。フルスクワットではなくハ−フスクワットが無難です。回数は翌日軽い筋肉痛が出る程度が良いでしょう。慣れてくれば1000回でも出来るようになります。回数が多いと数えているだけで途中でいやになるので、メトロノームの利用が便利です。回数を数えなくても良いので、テレビを見ながら出来ます。


2-1,糖質

 糖質は最も重要なエネルギー源です。デンプン、糖類のことですが、具体的には
   ご飯、パン、うどん、スパゲッティ、ケーキ、まんじゅう、バナナ
などです。これらはレース中はもちろんのことレース数日前からも心持ち多めにとるようにします。
レース中に腹が減ったのを我慢して走っていると、突然プスンプスンとガス欠を起こしてエンコしてしまうこともあるので要注意です。
ウルトラは体脂肪を燃焼して走るのが原則ですが、糖質が欠乏して低血糖になると、脂肪の燃焼も進まなくなると言われています。
いくら体脂肪で走るんだと言っても、しっかりと食べましょう。

 糖質の中でも最も効率の良いのはブドウ糖ですが、吸収が良すぎるのでかえって危険です。摂取後一時的に血糖値が上がりますが、インシュリンの分泌によりその後血糖値が下がります。下がり過ぎて低血糖になって倒れそうになることさえありますから、本当に危険です。吸収が良すぎても悪すぎても良くない。この点エネルギー系ゼリー状ドリンクが優れています。

2-2,ミネラル

 ハーフマラソンぐらいまでは水だけでもいいのですが、ウルトラになるとミネラルは欠かせません。
主なものはナトリウム、カリウム、カルシウムです。これらは汗と共に失われますので、きっちりと補給するようにします。
スポーツドリンクからとるのが一般的ですが、ウルトラでは食事として補給することも十分に考えておきます。
  うどんやラーメンの汁、みそ汁、豚汁、梅干しや佃煮
要するに甘いものばかりではなく、塩気のあるものも食べるようにしましょう。
果物もいいのですが、各エードで果物の摂取だけで栄養を摂取した気になっていると、後で消耗してきます。果物からとるエネルギーやミネラルはたかが知れています。

 汗をかくと水分と塩分が出ていきます。その時水の摂取だけだと、血液の塩分濃度が低下しやすいので、少ない水の量で喉の渇きは収まります。そしてまた汗をかいて、少し水を飲んで。そんなことを繰り返していると、体からどんどん塩分と水分が抜けて脱水状態になってきます。だから、塩分は意識的に摂らなくてはいけません。これはとても大切なことです。

2-3,アミノ酸

 アミノ酸はフルマラソンまでは摂取することは少ないのですが、距離が長くなるに従って重要になってきます。血中のアミノ酸濃度が低下すると筋肉破壊が進みやすくなると言われていますし、アミノ酸はミネラルや糖類と同様にエネルギー代謝に深く関わっています。脂肪燃焼の焚き付けの役目をします。翌日以後の筋肉痛も低減します。

最近はアミノ酸系スポーツドリンクも出てきています。明治のバームや味の素のアミノバイタルがそれです。レース中は粉タイプをウェストバッグに入れておくのもいいでしょう。練習でも試しておく必要がありますが、毎回使っているとお小遣いのほうが確実に元気をなくしていきます。他に牛肉を甘辛く煮たしぐれ煮もお勧めです。これだとタンパク質と同時にミネラルも摂取できます。ただ、これらは疲れてくるととてもまずくなるのが欠点です。


3-1,上りは無理しない 下りは押さえる

 上りは息が上がりやすいのです。そうすると同時に脈拍も上がっていて、無酸素領域に入ってきます。筋肉には乳酸が溜まってきます。この乳酸もゆっくりと休めば次第に消えていきますが、レース中ではそうもいきません。一度上昇した乳酸はもう下がらないと覚悟しておいた方が良いでしょう。ひどくなると足が痙攣したりつったりします。上りでは十分にスピードを落として脈拍を平坦地を走るときと同じぐらいかプラス10ぐらいに保った方が良いでしょう。きつい上りではいっそのこと歩いてもかまいません。脈拍を知るのはスポーツ用のハートレイトモニタの使用が一番です。自分にとってはどれぐらいの脈拍数だとどれぐらいの疲労が生じるのかがわかります。頻繁に使っているとモニター無しでも、脈拍数が想像つくようになります。ウルトラマラソンでは無酸素領域の運動になることは極力避けましょう。

 下りを調子に乗って飛ばすと、後で必ずひどい目にあいます。足の筋肉、特に大腿四頭筋が痛んで平坦地でも走れなくなります。長い下りでは初めはスピードが出せても、途中から足ががくがくしてきます。こうなったらもうおしまいです。取り返しがつきません。筋繊維に傷が一杯入っているはずです。一つ目の下りは順調に下れても次の下りでは走れなくなっていることもあります。下りが走れるのと走れないのとでは時間的に雲泥の差が生じます。下りは足を「大切に、大切に」痛めないように慎重に下ることです。"1-3、筋力"のトレーニングはこの下り坂を(そこそこ)快調に走るためでもあります。

 上り下りの多い野辺山高原100Kmマラソンはペース配分がとても難しい大会です。「上りは無理しない、下りは押さえて」いたら、「どこで走るねん」と言われそうです。

3-2,食べて飲む

 ぱくぱく食べて、がぶがぶ飲める人は幸せです。多くの人が食べられなくなるからです。同じようなものばかり食べて飲んでいては、だんだんいやになってきます。バナナがいいからといって、バナナばかりは食べていられません。足が疲れてくる頃、胃も疲れてきているはずです。筋肉に血液が優先的に送られて、胃には送られないかも知れません。

 食べられなくなるのは胃が荒れてくる為でしょう。走る途中に食べると、食べ物が入った胃袋をじゃぶじゃぶシェイクしているようなもんで、胃の壁は荒れて、時には出血さえします。100Kmを超えると殆ど人が大なり小なり胃をやられます。胃腸の弱い人は胃薬を用意しておきましょう。黒い便の出る人は消化管出血を起こしています。このような人はH2ブロッカーやPPIと呼ばれる薬(※1)を服用して出血を避けて下さい。

 大切なことは、食べられる内はしっかりと食べておくことです。ウルトラランナーなら、走り初めや途中の段階ではそんなに食べなくても走れてしまいます。先を急ぐあまり、時間を気にして十分に食べないでエイドをさっさと出ていくかも知れません。これが墓穴を掘ることになります。早くから血糖値が下がることになります。早い目の補食でガス欠を避けましょう。もう一つ大切なことはオーバーペースにならないことです。つぶれる前に、早い目にペース調整をしましょう。
どうにも食べられなくなっても、これだけは食べられる(飲める)という自分に合ったものを見つけておくことも大切です。飲み物ではコーラ、カルピス、コーヒー牛乳、ビール・・・なんかが結構いけます。ビールは個人差が大きい上に、大会によっては禁止されていますので気をつけてください。

3-3,濃い練習

 月に300Kmの練習をするとした場合どんな内容がいいでしょうか? 

  •  10Km×30日 はもっとも悪いパターンです。健康ジョグならこれでもいいのですが、ウルトラ向きではありません。
  •  50Km×4+10Km×10 がおすすめです。1週間ごとに長距離をやって、間は軽いランで疲れをとったり、ペース走を入れるようにします。
  •  1週間ごとの長距離は、距離にこだわりません。超LSDを1日やっても構わないし、アップダウンのクロカンを距離短くやっても構いません。フラットなコースを5時間走しても構いません。要は十分に体に負担をかけることです。「今日はしんどかった。ええ練習が出来た。」という感じで終えることが出来ればいいでしょう。このあとはしっかりと疲れをとって体の回復を図ることが重要です。この回復期にこそ、肉体はより強くなるのです。走っている途中には強くなりません。栄養を十分にとるようにします。痛みが残る時や疲れのひどい時は回復期の2〜3日を完全休養にしても構いません。積極的休養といってジョグを勧める人もいますが、体に大きな負担をかけたあとは完全休養がいいでしょう。そのほうが故障も起こりにくくなります。

     とにかく練習量は多いほど良いのですが、かと言っていつもいつも長時間だらだら走っているようでは効果は上がりません。また歩きがメインで少々走るようなLSDではほとんど役に立ちません。メリハリが大切です。きつい練習と優しい練習を取り混ぜます。あるいは一回の練習の中でペースの上げ下げをします。(本番でのペースの上げ下げは禁物ですが。)

     練習は計画的にやる方がよいでしょう。まずは要所要所に大会参加を入れます。メインとなる大会への準備となるような内容の大会を選んで、メインに向けてStep by Stepで走力が向上していくような形がいいでしょう。それぞれの大会が節目になるようにLSDや時間走、スピード練習、筋肉トレーニングを効果的に組み合わせます。

     練習はいつから開始すればいいでしょうか? 私の経験則では4ヶ月前です。メインとなる大会の4ヶ月前から始めれば十分です。ただし、いきなり練習量を増やしては故障を起こしますから、それまでにもそこそこの練習量は必要です。一番大切なのは2ヶ月前から半月前までの1.5ヶ月間です。この期間はみっちりとやりましょう。

     仕事を持っている人なら、月間300Kmでも大変です。朝夕は通勤時間にとられます。残業があって遅くなると、走る時間も気力も失せてしまいます。週休2日ならまだしも、週休1日では、その1日をランニングだけでつぶしていては、他に何も出来ません。本当は月間500Kmが望ましい所ですが、そんな恵まれた環境を持った人は少ないでしょう。でも情熱があれば、ランニングの時間は作れるはずです。限られた時間で濃い練習をして下さい。自分に合った内容で、納得がいくまで出来れば、自信もつくでしょう。

    ※1 PPIが強力でお勧めです。でもこれはドラッグストアでは買えません。H2ブロッカーなら「ガスター10」がドラッグストアで買えます。100キロを超えるような大会ではスタート前夜から服用します。後はスタート前、その後12時間おきぐらいに服用しますが、これは正規の服用方法ではないので、自己責任でお願いします。これで出血は防げるはずです。ただ、出血は防げても、吐き気は起きるので困ったもんです。ナウゼリンという薬があるのですが、なかなか防げません。

      文責 神園

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